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からだが語るもの

今週発売の『週刊ポスト』に、緒形拳追悼の記事があった。
『火宅の人』ほか、有名映画で演じた、緒形さんの数々の濡れ場シーンについての言及。

若かりし頃の松坂慶子、原田美枝子、藤真利子、樋口可南子などと、
はげしく絡み合うさま、そのシーンの背景を、簡潔に文章で再現したもの。
「週刊ポスト」という雑誌に求められているものと、
名優・緒形さんへの敬意とが、
両立してる感じがすごくして、
1ページに満たないくらいの短い記事だったけど、何だか好感がもてた。

私は、緒形さんを「父親」「祖父」的な役どころでしか見たことのない世代だけど、
男らしいぎらぎらとした演技ってのも間違いなく緒形さんの真骨頂だったはずで、
きっとそういうシーンもね、すごいインパクトで人々の心に残っている、
とにかく「名シーン」だったはずで、
なんかね、「いやらしい!」とかっていうのは感じなくて、
緒形さんもこれ読んで、嫌な気はしないんじゃないかって思った。

愛情も憎悪も諦念も欲望も、綺麗も汚いも、
生きている人間のなまなましい姿を、演じ続けた人だったんだろうから。

・・・とか言いつつ、立ち読みした雑誌が、
「ポスト」じゃなくて「現代」だった気がしないでもないんですが。
たぶん、ポストだよね?
あの雑誌、けっこう好きなんよ、普段から。

で、今夜はまた『風のガーデン』に間に合うように帰ってきて、見ましたよ。
先週の予告で流れてたシーンがなかったのが不思議、というか解せなかったのだが、
「緒形さんのシーンを編集で増やしたからカットされたんやないと?」
という夫の言葉に、それもありか、と納得するわたくし。

本当に不思議だなあと思った。
もうこの世にはいなくなってしまった緒形さんが、
あと2ヶ月は、私たちが初めて見る姿を、見せ続けるってこと。

「そんなに悲しんじゃいけません。
 死ぬことは、生きている者が必ず通る道です。」
ドラマで緒形拳が言うせりふは、どうしようもない真実であって、
でも、生きている人間は、逝く人も遺される人も、老いた人も若い人も、
どうしたって、そう簡単にわりきれるはずない、
でも、命の尽きる者と、まだ続く者と、
それぞれの立場をどうにかしてまっとうするしかない、
きっとそういうドラマになるんだろうな、って思う。
by emit9024 | 2008-10-16 23:26


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