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あきらめない

Qちゃんは負けてしまったなあ。年齢的なこと、あまりにも久々のレースであることから、「勝てないかもしれない」とは思っていたけれども、まさかあんなに序盤で失速するとは。ペックさん、私もCM明けに目を疑いましたよ。それでもQちゃんは走りやめなかった。優勝インタビューも終わり、中継時間が終わりを告げるころにも、真っ青な顔でまだ走り続けているQちゃん。胸が詰まった。これが勝負の世界というものなんだろう。

「あきらめなければ、夢はかなう。」そのメッセージは、優勝しなければみんなに伝えられない、と、戦前、繰り返し語っていたQちゃん。「でも、高橋選手のこの走る姿から、そのメッセージは、伝わってますよね。」と、最後の最後のほうに実況アナウンサーが言った。そのとおり。Qちゃん、走ってくれてありがとう。

私は走る人は誰でも好きだ。強い野口さんも、土佐さんも、原さんや大島さん、坂本さん、弘山さん、渋井さん、加納さん、大南さん、みんな私にとってはお馴染みで、いろんなキャリアを知ってるランナー。今日優勝したフレッシュな中村さんにもときめいた。みんなが過酷な練習をして、調整をして、いろんな人生を賭けて走ってる。そのことに思いを馳せると、ほんとに、レースという本番の42.195キロ、なんて短い時間で運命が決まってしまうんだろうと思う。今日という日を本当に楽しみにしていた。Qちゃんは勝てなかったけど、また走る姿が見たい。もう勝てなくてもいい。でも、走るだけでこんなにいろんなことを感じさせてくれる選手は、やっぱり、高橋尚子なんだ。


昨日と今日で、『絵描きの植田さん』(いしいしんじ 新潮文庫)を読んだ。泣けた・・・。「ごはん日記」という日記に夢中になった、いしいしんじ。小説は、「ぶらんこ乗り」と「トリツカレ男」に続いて今回が3冊目だけど、これがいちばん好きかも。なんだろう、この祝福感は。

『ねえ、みんな、いままで知っていた? 考えたことがあった?
 ほとんど自慢げに胸をそらせ、輝くような声でメリはいった。
 私たち、こんなすばらしい世界に住んでるのよ!』

あらすじだけを機械的にたどれば、なんてことのないお話なんだけど、こんなにも泣けるそのわけは、ここの部分に凝縮されてる。私たちはすばらしい世界に生きている、その奇跡のような喜びが、問答無用に胸に迫ってくるんです。いしいしんじという人は、少しも難しい表現を使わず、簡易で、しかし選び抜かれた言葉を連ねて書く。どのページをひらいても美しい文章。1ページか2ページ読むだけでも、気持ちいいんですよ。童話のようでもあり、時々、映画を見ているように映像がたちのぼってくるようでもある。


今日は日がな、ゆるゆると過ごした。ここんとこ、引越しだーなんだで、週末も何かとやることがあったり、気持ち的に追われたりしてたので、ほんとにひさしぶりに、心身ともにゆっくりした気がする。こんなのんびりな週末も、4月になればまた2ヶ月くらい味わえないので、満喫しないとね。起きて、わがマンションの1階にあるラーメン屋さんへ初めて行ってみた。やさしい豚骨ラーメンのお店です。なんせ安いのがすばらしい。帰ってマラソンを見ました。夕方になってスーパーへ買物に行き、夜ごはんを作った。ゆうべ肉肉しい晩ごはんだったので、今夜は超ヘルシー料理です。
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玉ねぎと青葱入り卵焼き、サバの塩焼き、大根おろしは、たろうくん作。野菜たっぷりのあんかけ温やっこは、わたくし作です。なんか、朝定食のような夕飯になってしまいましたが、美味しかった、非常に満足です。明日からのお弁当のために、豚と大根の煮ものやれんこんのきんぴらを作りだめし、ほうれん草もゆがいておきました。


ということで、新しい居をかまえて1週間が経ちました。思い描いていたよりももっと、気ままで快適な生活です。私は相変わらず、仕事をして、本を読み、走り、音楽を聴いてます。料理して洗濯して掃除してお弁当も作ってます。自転車で会社に行ってます。夜はすこぶるよく眠れます。今このように(と、お見せできないのが残念)、日記を書きながら缶ビールも飲んでます。その背後で彼が、だらーんとテレビを見ています。時々、思い立ったように動いて、トイレに行ったり、換気扇の下でタバコを吸ったり、そのついでに洗いものをしてくれたりしてるのがわかります。いつでも人の気配があるということは、意外と、心安らぐものなんですね。居てくれてうれしい、って思う自分の感覚自体が、とても新鮮で、だけど驚くほど、しっくりきてます。
by emit9024 | 2008-03-09 22:06


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